2008年08月01日

ナムジ-大國主-(完) 全05巻

【ナムジ-大國主-】 全05巻  /安彦 良和

2世紀。三国志時代。
ナムジがオオナムジになり、大国主として生きていく半生を追った物語。
ひとりの幼子が骨だらけの難破船に乗って稲佐の浜に座礁する。その村で子ナムジを育てるが、気性が荒く暴れ者で手が付けられない。斐伊の鉱山に連れられ鉱夫となる。そこへ於投馬(いずも)の国のスサノオの娘で後継ぎのスセリ姫が鉱山見物に来る。ナムジは権力を憎み成り上がるため、スセリに自分を売り込む。

古事記を元にした作者の創作物語。よく出来ている。
とくに、スセリを娶るためのスサノオの難題に取り組む話が、イザナミの霊を鎮める「鬼魅(おに)払い(祓い、が良かったのに)」の儀式になっているところなど唸った。
私は勝手にスセリは子どものない正妻だと思い込んでいたのだが(なぜ記述がないのかまったく謎だ)、確かに子がいてもおかしくない。そう記録に書かれていないだけで。
ここでは建御名方がスセリの子で描かれる。
それとヤガミヒメは大国主の妻にはなってはいない。この作品で、大国主の妻になったのは他にはタギリ姫だけ。タギリは、スサノオと卑弥呼の娘として描かれる。
クシナダ姫は若くして亡くなった事になっており出てこない。

スサノオがカグツチと習合しているのはなるほど。そう考えれば、花の窟神社が熊野にあるのも自然になるのか。ここは今後探求していきたい。
もし仮にその説に力があるのなら、明治天皇の継母、英照皇后はそれを知っていたはずだ。すると火産霊神として火伏なんかじゃない、これは結界を張る意味でそれを現在の秋葉原の地に置いたのかもしれなくなる。それは徳川の結界陣に対してかもしれない。
ちなみに英照皇后の母方は上賀茂神社の神職筋である。秋葉原の北側そばに神田明神、オオナムチ(大国主)とスクナヒコナが祭られている。
とすると、荒俣さんが筑波エキスプレスを「マサカドライン」と呼んでいるが、それはそもそも「スサノオライン」の上書きということになるのだ。
うーん、面白い。ずいぶんと遊べる。

安彦氏は、スサノオの三男のオオドシをニギハヤヒ(※)であり大物主とし、大国主と同化させていない。ここは賛成。天火明命も違うと私は思っている(習合されているけど)。このニギハヤヒに、鳥見を統べらせ、後の三輪の王と書いている。これが「先代旧事本紀」にも書かれている神武統世になっていくのだけど、この話と国譲りは続きの『神武』になっている。
国譲りといえば事代主だが、これはタギリの子としてある。
また、少名彦名はなんと! ヒルコに見立てているのだ。大胆だなぁ。(古書の「秀真伝(ホツマツタエ)」だとワカヒメがヒルコ)
そして助けたウサギは、霊力をもつ女性に描かれる。

スサノオ治める於投馬は、布都(ふつ)の国としてある。あの石上神宮の、だ。
これだと上記のニギハヤヒを考えれば、後を継いだのはスセリでなく、オオドシということになるのだが、これも『神武』に描かれていくのだろうか?

途中から人質となった大国主は、卑弥呼の邪馬台国につかざるを得ない。ここでスセリ、タケミナカタと敵対していく。
ニニギが死んで、大国主はタギリと共に沖の島に隠る。つまり邪馬台国と於投馬、両方から距離を取るわけだ。この先は別の作品、『神武』になる。
大国主とタギリの長男が賀茂建角身命(八咫烏でもあるらしい)、次作はその人が主役らしいのだが……。どう収めるのか楽しみ。

ツッコミはいろいろとあるけど、充分に楽しめる仮説で楽しい。
大いなる不満は、出雲は母系であると考えるので、父系的な妻のありようはどうなんだろう? オオナムチってもっとふらふらしてたんだと思うんだよね。

徳間書店から刊行されたものを読めた、幸せ。これはハードカバーのもの。
日比野克彦さんが装丁。良い仕事をされている。
                         2008/7/31

※ニギハヤヒ(饒速日)も特別に謎な人。物部氏のご祭神であり祖で知られる。そして80年代から90年代初期に大国主の人気が高かったとしたら、その後のスーパーヒーローがこの人になっている気がする。名前もやたらと多いし、長いしね。
かつていろいろと調べている時に、2ちゃんねるの民俗掲示板に書かれたひとこと。
「困ったら、なんでもニギハヤヒとアラハバキにまとめるな」 笑った、大賛同。
ちなみに「千と千尋の神隠し」で、ハクが本名を憶いだすシーン。その真名は「ニギハヤミコハクヌシ(饒速水琥珀主)」。映画館でつい「おいおい」って呟いたのを覚えてる。

《こんなふうにおススメ》ある程度、この時代の話を知っておいた方が良いかもしれません。もちろんあくまで安彦氏の見方のひとつとして理解しながらも、何が作者の創作で、どこが新しい見方なのか、わかっていた方が何倍も面白いです。もちろん作品としては、何も知らなくてもめちゃくちゃ面白く良く出来ています。
この時代って作者が後書きに書いているように、仮説だらけではっきりとしない。しかもオカルティックに行き過ぎたり、トンデモ本になったりする。そのあたりも踏まえていて、よく出来た作品です、おススメ。

【コミックセット】


【文庫版】


ラベル:安彦良和
posted by zakuro at 00:49| Comment(0) | 漫画-少年青年系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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