2009年06月05日

蟲師(完) 全10巻

【蟲師】 全10巻  /漆原 友紀

蟲師と呼ばれる、蟲(むし)に魅入られ、それを生業としている男、ギンコ。蟲に取り付かれ、かどわかされている人々に関わり、蟲とともに生きていく。
読み切りスタイルで進んでいく。
蟲といっても虫じゃなく、生命の根源、スピリットのようなもの。

見事としか言いようがない。全身に震えがきた。
そんな作品にこれからまた出会うことができるだろうか。話の構成も、絵も、色使いも何もかもが素晴らしい。一編の詩や絵を鑑賞しているようで、切ない。
カラーなどは震えてくる。ちょっとした小咄までうまい。
そこには、人がいて、生きている。命が切なく愛おしく感じる。山や里、そして海。人が生かされていることを実感させてくれる。

こういう人が諦めないで作品を描き続けてくれてほんとに良かったと思える。これが受賞しなかったら、諦めるつもりだったとある。デビュー作だとは思えない力作。当時、24歳でこんなのが描けるのか。
この作家の繊細な情緒感が胸に沁みてくる。また、この作者の文字が人を癒す力を持っている。
ゆっくり時間をかけて丁寧に読んだ。余韻が大きすぎる。行間が深すぎて、一気に消費するのはもったいないからだ。こういう作品が増えてほしい。

なんでギンコだけ現代の服なんだ? そのため、時空に落ちた旅人のようで、一緒に異世界を覗いている気分になれる。
3巻の、ギンコの子どもの頃の物語のトコヤミは、今の現代人の心の闇を感じさせた。
8巻の「冬の底」は、当然ながら、ギンコすらも自然の一部でしかないことを感じさせてくれて、深い。
                         2008/3/16

《こんな人におススメ》
すべての人にお勧めしたい。たぶん私のベスト10に入ります。
《こんなふうにおススメ》
癒されるけど同時に考えさせられる。オトナの昔話かもしれない。
その切ない感じは、一見柳田國男よりも折口信夫のようにも感じるけど、いやいやなかなかちゃんと計算されていて、ともかくも唸ります。民俗学っぽいけど作者のオリジナルファンタジー。この作家の脳内で組み立てられたものでしょう。だからすごい。
作者のおばあさんの話も出てきますが、私たち日本人のDNAって侮れないなと思うわけです。

UP追記>
今は、9巻まで刊行されていますが、なかなか読まない。
読みたくない、もったいなくて。次に出るまでじりじり待つより、この表紙を眺めながらいつまでもニヤニヤしていたい。

9巻/
・「残り紅」 うっかり影を踏んでしまい、本体が入れ替わってしまう話。
・「風巻立つ」 風を操る少年。
・「壷天(こてん)の星」 次元の隙間に落ちて記憶を亡くした少女。
・「水碧む」 水と同化してしまった少年の話。
・「草の茵」 ギンコの子どもの時の話。ここでいう茵(しとね)は、座布団のこと。

読み切ってしまうのが惜しくて大事に読んでいたら、10巻も発売されてしかも終幕。
うーん、なんだか残念。
この作家さんのデビューの頃の作品集も大事に読んでいて、目の黒いうちに終わって欲しくない貴重な作品だと改めて実感。
数年に一冊でも良いから、また描いて欲しいなあ。

この巻も、切なく胸に沁み入る話ばかり。なんでこんなの描けるんですかね。
初期作品集の『フィラメント』を読んでいると、ずっと長い間いろんな断片を温めてきていたことが感じられる。
そしてそれらについて繊細に細部まで丁寧に感じ尽くされていること……。人はどこまで“感じられる”ものなのだろうか。
その想いを世に出してくださったこと、感謝したい。
                         2008/12/19

10巻/
いよいよこれでラストの巻。
終わってしまうのが寂しくて、自分へのご褒美用に目の前に積んでおいた。でも、そろそろ自分の中でも一回終わらせなければと思い、読む。
私の心のベスト10に入る作品。

・「光の緒」 妖気の光の糸で衣を紡ぐ。
・「常(とこしえ)の樹」 人々に与え続ける千年生きた大杉の話。
・「香る闇」繰り返し人生を送る男の話。
・「鈴の雫」ヒトがヌシに迎えられた山。カヤを救うべく、ギンコは理に話をつけに行く。

大杉の話は泣けた。無条件の愛と、よく言うが、人間の身ではなかなか出来るものではない。
最後の話は、これで最後なのだと思うと読む前から、心に沁みてくる気がした。
鈴の音は、神の声。なるほど。

ギンコはまだ旅をしている気がする。きっとそうなのだろう。
この作品に出会ったお陰で、漫画好きに拍車がかかった。感謝しています。
ありがとうございます。
                         2009/6/01

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ラベル:漆原友紀
posted by zakuro at 00:21| Comment(0) | 漫画-少年青年系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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