2009年01月08日

あさきゆめみし(完) 全13巻

【あさきゆめみし】 全13巻  /大和 和紀

日本が誇る古典の名作、紫式部の「源氏物語」を漫画にしたもの。

帝の御子として生まれた君に、寵愛した父帝が、政権争いに巻き込まれぬように臣として氏を与える。
成長した青年は、源氏の君と名乗り、数々の女性と浮き名を立てる。
光の君と呼ばれたひとりの男を巡っての、女性たちの生き様、恋愛模様、人生のあわれを綴った物語。
10巻までが光源氏が主人公。11巻から二部として、薫がメインになる。

原作について多少……。
正直、幼い頃はなぜこれが日本の名作になるのかわからなかった。
何もかもを持ち合わせた王子様である色男が、ありとあらゆるタイプの多くの女性とやりまくっている話じゃないかと嫌悪感すらあったのだ。
それでも古典も読んだし、現代語訳も読んでみた。尊敬している多くの作家が、この作品を研究し読みもどいていたからだ。
でも今いちピンとこない。丸谷才一氏、大野晋氏さえも源氏物語から話をするのに、この作品の良さが、当時、私にはわからなかったのだ。
ところが漫画とはいえ、今回、その意味合いを理解することが出来た。大人になったということなのか?

1000年程前の作品である。
内容は、今風に言ってみれば、光源氏の恋愛攻略ゲームである。あらゆるタイプの女性を、粋なやり方(それが失敗することもあるが)で光源氏が攻略していく。

多くの人々が、この作品を通して、恋愛とは何か、女性とはどういう生き物なのか、そして無粋ではない教養のある生き方、人生の無情さなどを学んだのではないだろうか。
インターネットはもちろん、映画もテレビもない時代。
私自身、平安時代の知識をそれほど持ち合わせていないのが残念だが、情報の少ない中で貴重な恋愛指南書だったに違いない。

もちろん、恋愛だけでなく、様々なタイプの女性の生き様は、そのまま女性のロールモデルとしても学べる。
多くの女性たちがこの作品に、女性としての生き方を見いだしたのだろう。

そして光源氏と女性たちの駆け引きがこれだけの間、多くの人々の心を掴んだのは、文体はもちろん、ユーモアや様々なエッセンスも豊富だからだ。
日本はコンテンツの豊富な国だと言われるが、もう1000年も前に攻略ゲームの名シナリオがあったわけだ。
歴史的にもこのコンテンツ層の厚みは誇れるのかもしれない。
多くの作家が魅了されるのは、作り手側にとっても、このシナリオに学べる要素が多いからだろう。特にゲーム作家や漫画家には格好の教材だと思えた。

この作品の良さがわかってこそ、いわゆる人生を理解しはじめた“オトナ”ってやつなのかもしれない。

ここに登場する女性たちは、運命とは自分の力では変えられないことを理解している。そういう時代だったのだ。
その中で恋に、愛に生きていく。
もちろん現代だって変わらないところもある。どうしてもままならないことがある。“諦め”を知り、それを味方につけた時こそ、女性としての“オトナ”なのかも。辞書によれば、これを“悟り”というらしい。

この作品は忠実に原作を漫画化している。
光源氏の女性に対しての甘えっぷりとマザコンぶりも忠実。
後半の人生の儚さまでしっかり描き通している。
一時的な遊びというよりはひとりひとりの女性と向き合って恋愛しているところはすごいと思う。

漫画作品として、当時をリアルに再現しようとした細やかさに感服。
観ているだけで、風俗や文化を学べる。
漫画ならではの素晴らしさ。
作者のこだわりとプロ意識が完成された名作だと思う。

あれだけの大作を、テンションを変えずに読み手を飽きさせることなく、描ききった力量に脱帽。
また解説本の、作者の光源氏に対するクールな見方はかなり共感。
読んで良かったと思えた佳作である。

漫画作品になったからこそ、『天上の虹』から観る、内容の似通いを感じて、歴史とは繰り返されるものなのだなと、感慨深かった。
                         2009/1/06

《こんな人におススメ》
「源氏物語」に興味のある方、当時の文化に触れたい方にも。

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ラベル:大和和紀
posted by zakuro at 01:46| Comment(0) | 漫画-少女レディース系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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