2009年03月22日

フィラメント

【フィラメント】 全01巻  /漆原 友紀

蟲師の漆原友紀の、志摩冬青の名前だった初期の頃のも含めた、短篇作品集。

収録は、
・「岬でバスを降りたひと」
岬の端、バスの終点地の、小さな店を営む祖母の家で育った実津子。
祖母が亡くなって、店を畳に来る。
実津子は今は、未亡人でひとりで息子の唯を育てている。
幼馴染みの沢谷はバスの運転手になっていて、自殺の名所でもある岬にやってくる、女性の霊の話を実津子にする。唯にもその女性が見えていた。

以下は、ショート。14篇。
・「迷宮猫」 巨大な迷宮のような団地。そこで、新参者が迷わないように案内する猫。
詩編のような「サンゴの子」
「黒い指」と「誰そ彼」は、神隠しにあった靖成の話。
「銀河の眸」 宮沢賢治のようなショート。
「バイオ・ルミネッセンス」 光は実は、虫で。蟲師の原点のような話。
「うたかた」 三途の川の渡し守。
「花咲く家路」 お盆の話。
「海と優しい日」 故郷に帰る日。
「夏の宇宙」 夏の断片。
「海の底 川の底」 “海の栓”の話。
「白髪ヶ原」 蚕づくりをしている祖父の、哀しい戦火の物語。
「化石の家」地質学者の愛人に恋する少年。
「雪の冠」 自分だけの王国のたったひとりだけの王様だった子どもは、その足で自ら大人への世界に踏み出す。

「Mar・man」
ヴィオナは漁師のオウルと二人、海のそばで生活を営む。それぞれに恋人もいて……。

蟲師の基になった「虫師」も収録。
「虫師<青い音楽>」 ギンコではなく子どもの蟲師キク。
「虫師<屋根の上の宴>」 虫師たちの集まり、守庚申の話。

彼岸と此岸の境界があいまいなのだ、それがこの作品の魅力だし、作者が取り憑かれている部分なのだと思う。
境を取らないソコには、たくさんの何かが詰まっていて、そしてまた降り積もっていく。
それをそぉっと取り出して、紙面に落とし込むのが上手いのだ。
一編の詩を詠むようだし、交響曲ではない小品を楽しむ気分。

あっと言う間に読めてしまうのだけど、もったいなかった。
いつまでもたゆたっていたい気分になる。

「Mar・man」の話は、深い愛情を感じさせる。

「虫師」は、絵も若くて今とは違うが楽しい。
この頃と比べると、今の作品はよく構築されている。でも、この頃の儚げな、感覚的な物語の良さも捨て難い。
作者曰く、同一時系列ではなく、パラレルの話だそう。

長繊維をフィラメントと呼ぶが、ここでは電球の発熱線条や、電子管の直熱陰極の方のフィラメントだと思う。
                         2008/12/30

《こんなふうにおススメ》
ほんと、素晴らしい作家さんだと思う。
期待を裏切りません。



ラベル:漆原友紀
posted by zakuro at 14:17| Comment(0) | 漫画-少年青年系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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