2010年06月25日

神のみぞ知るセカイ 09巻まで

【神のみぞ知るセカイ】 09巻まで  /若木 民喜

舞島学園高校二年生、桂木桂馬(かつらぎけいま)は、天才ギャルゲーオタク。クラスメイトには、オタメガネと蔑まれているが、実は、「彼に落とせない二次元の女子はいない」とネットのセカイでは超有名人の、通称「落とし神」。現実の女子にはまったく興味がなく、ゲームの女子を生き甲斐とする。
このセカイにライバルはいない、そのプライドが、うっかり冥界の契約を結んでしまうことになる。
冥界法治省から派遣された、元掃除係を300年、やっと駆け魂隊に昇進したエルシィ(エリュシア・デ・ルート・イーマ)の協力者(バディー)となってしまった桂馬。「悪魔と契約した神」として、桂馬は、地獄から抜け出した罪人の魂を、うっかり心のスキマに迎え入れてしまった三次元の女子たちを、恋に落として救うという、もっとも苦手なミッションに取り組むことになる。

週刊少年サンデー。最近の、アキバ系男子が崇める神作品。
ここでいう神は、「ネ申」。直訳すると、「まるで神のような行為」とすべきか? 究極にこだわる人や、職人芸、神のように崇めたい程すごいっ!みたいな時に使われるアキバ系用語。

とにかく笑った。こんな作品だったとはっ! ちらほら話に聞いてたけど、もっと早く読めば良かった。
しかしこれ、オタク事情がわからなければ、さっぱり意味がわからない。ゲーマーの話だが、そこはゲーマーでなくても充分に楽しめる。ゲーマーならもっと面白いんだと思う。
でも、二次元(ゲームや漫画、ネット、アニメなどの創作されたコンテンツの中の世界や、その登場人物を総じて言う)では、どんな風潮なのか、どういう感覚で思考しているのか、そのベースがわからないと面白さは半減してしまう。
読者を選ぶ作品ではあるが、現代社会をよくよく表しているので、実は多くの人にススメたい。
今の20代より若い子たちは、生活の中に二次元が普通に重なっているので、気にしないで読めるんだろう。なにせ、物心ついたころには、ネット環境が整っていた世代なのだから。
だからこそ、オトナに読んでいただきたい作品。思想家、ジャーナリスト、学者、教育者らの皆様に特におススメ。その理由は書いていく。

ここまで閉鎖的なテーマを、こんなにエンタテイメントにしちゃえたのは、作者の実力もそうだけど、なによりそのこだわりと好きだという視点。
テンポと決め台詞のタイミングが絶妙。読みやすくて、どんどん進める。

桂馬のキャラは、データオタクでもあり論理を美学としているのだが、それは桂馬の狭い個人的観点からなので、客観的には論理が破綻しているのが笑えるポイント。ここがオタクたちの、自分たちの脳内的妄想空間の狭い範囲の中だけでは許されるという特権を見事に表しているのだ。
作家はそれを狙っているのだが、わかってても手の内ですっかり遊ばれてしまう。かえって気持ちいいくらい。まさに「胡蝶の夢」で、すっかり蝶になりきっちゃっている桂馬。そこに迷いは一切ない。荘子もびっくりだ。こういう男子、今、多いんだろうなー。
現代哲学は、ここから語った方がいいんじゃないか? 病理と紙一重になるけれど。

台詞とモノローグが上手い。粋なのだ。実は笑わせておきながら、意味が反転していて、感じ入るモノが多い。この作者の狙い、すごすぎる。
例えば、「現実(リアル)のような、不合理かつ、不条理なものに、かかずらう必要はない!!」
現実はいつだって、不合理で不条理なものなのだ。まったくおっしゃるとおり、リアルというものは混ざり物多し、純度も完成度も低いものなんですよ。だから、そこに人が生きていく価値がある。それをこのような台詞で言い切っているのは、結構心地良かったりもする。
今までは、思想的活動って、真っ正面から体制に切り込んでいって、自爆していくものが多かった。こういう脇から攻めるやり方ってあるよね、そう思わせる。
作家にはたぶんそこまでの意図は無い。ただ、遊んでいるだけ。そこが面白いのだ。

「心のスキマを埋めるのは、恋が一番!」これ、すごい台詞だ。究極かも知れない。
「現実(リアル)の女も、ゲームのように落とせるのでは?」「現実(リアル)とゲームを一緒にするな。ゲームに失礼だろ」大爆笑した。しばらくリアルに戻ってこれないくらい笑った。これで一気にファンになる。
萌え記号を、ここまでバカにして、いや、もとい……使って、楽しめるとは。秀逸。
「『好き』と『嫌い』は変換可能」すごいよね。これ、思想の域ですよ。笑いながらだけど、桂馬のやっていく様々な方法は、かなり実際の恋に有効なものも多い。
「攻略は、悩みを聞かないことには始まらない」名言。二次元崇拝男子よ、実際の3D女子に向かっても頑張れ。
まあ、これは漫画なんで、三次元女子の攻略も、ゲーム的ではある。確かに実際の恋愛は、変則値が多すぎて攻略が難しいのは事実なのだ。

絵も細密に考えられている。男の子の線はあくまで堅めに、だからこそ女の子は際立って柔らかくぷよぷよしてみえる。
妹設定が甘いと言われたエルシィが、桂馬の指を咬む表情は、私でさえ攻略された。
おまけ漫画の4コマもかわいい。

話数のタイトルは、「FLAG.」。これも、オタク用語で「フラグ(旗)を立てる」。ゲーム用語で、攻略キャラにアクションを起こせる状態になった時に立つ。重要メールなどに、忘れないようフラグを立てるように、「主張したり、必要性があったり、意味がある(と思わせる、あるいは思い込んでいるものも含む)発言や行為や事項」などに「フラグを立てた」などとも言う。
FLAG.11の表紙、ゲーマーズバーは、実際にありそう。

ちなみに、桂馬のいう「ゲーム理論」は、フォン・ノイマンが着想したものの意味合いではない……が、遠からずもない気がする。

これもアニメになるんだろうな、ってか、してほしい。

ゲーマーでない私が学んだこと。ギャルゲーって、プロセスを楽しむものではなく、攻略するものなんだ……。そして正直、やってみたいとさえ思ったぞ。
これやっている人たちって、統計学者への道が開けるんじゃないだろうか? うーん、まさにゲーム理論だ。
                         2009/5/21、5/24UP

《こんな人におススメ》
実は、オタク系じゃない人に勧めたいです。面白いです。解説読本を付けて渡したい。
今、サンデーが「捨てたもんじゃない」と言われているのは、この作品のお陰らしい。

5巻/
今回のターゲットは、教育実習生の長瀬純。桂馬はうっかり教師ルートに入ってしまい抜けられない。新たに作戦を練るが…。
エルシィ、勲章貰えず。
次なる攻略相手は2年生の九条月夜。デザイナーの娘で友だちはいない天文部部長。しかし彼女は神隠しに? その実体は…。

面白い〜〜〜。つくづく思う、桂馬は才能の無駄遣い。リアル女性に興味を持ったら、どんな子も落とせるよ。
長瀬純は若さ故の傲慢さで、そこが駆け魂の隙間になる。人間心理だ。
エルシィの呪いのカレー、美味しそう。
                          2009/8/20、8/30UP

6巻/
ハクアがやってくる。エルシィと母は買い物。ハクアの挑発にわざと乗り、ゲームをしながら駆け魂について質問する桂馬。ハクアのバディー、姿を現す。
舞島学園中等部、生駒みなみ。塩素で髪が茶けるまで頑張ったが、水泳部の県大会のメンバーは補欠。その心のスキマは、桂馬への片恋に?!
エルシィはクラスメイトたち、桂馬に攻略された少女たちと軽音楽部を作る。
新地獄での駆け魂隊全体報告会。

今回も唸る。そーきたか。
桂馬、ゲーム強すぎ。まさに神。
この作品、シナリオ上手すぎ。痒いところに手が届く。作家さん、すごく親切。

桂馬のキラキラ笑顔、最強。キラキラしちゃうよね、ハクアのバディー格好良すぎっ! 一気にファン。この発想はなかった。丸井幸枝さん、ついて行きます。

舞高騎士団ファィル、笑った。今高校生なら、きっと作るね、自分がクラスメイト焚きつけて。
桂馬語録本、出して欲しいよ。
初恋展開に読んでる方がときめいちゃった。
アビイ・ロードのオマージュにちょっと泣きそうになった。盛り沢山で満足の一冊。
                         2009/10/18、10/27UP

7巻/
夏休み。隣に住んでいた鮎川天理に10年ぶりに再会。新悪魔と駆け魂の真実とは。ノーラとバディの浅間亮(りょう)。
桂馬のおじいちゃん、陶芸家の伝馬登場。墓参り。

出ました、幼馴染み設定。基本だよね。幼馴染み定義に笑った。
話の展開に奥行きも出てきて、これから楽しみ。なんでこんなに面白さ、加速してるんだろう、まさに神。
桂馬のお父さん、桂木桂一なんだ……。
                         2010/1/19、1/21UP

8巻/
田舎で子どもの愛梨と出会う。歳を重ねるがゆえのスキマ。
ラーメン屋の娘、上本スミレ。親子の喧嘩に桂馬は。
新しい地区長ノーラは地獄を潰した神を探す。
将棋の榛原七香。

帯裏が本編。アニメ化ですってよ、奥様。嬉しい。おめでとうございます。
田舎のご飯、美味しそう。続いてはラーメンで、夕食後なのにお腹が空いてしまった。甘いのはヤダ。
いろいろ読み進めるとわかってくるけど、なんでこの作品はこんなに笑いのセンス良いんでしょうね。感心。ゲームやらない私でさえこんなに爆笑、面白いんだもの。そして人生の勉強になる気がするよ。
                         2010/4/17、4/18UP

9巻/
将棋のプロを目指す榛原七香。天理(ディアナ)に負けて心に隙間ができる。
ディアナの姉妹の「ユピテルの姉妹」。ユピテルとは天界の王族。桂馬がかつて駆け魂を出した娘の中に、女神がいるかもしれないと、ディアナ。手がかりは記憶。
舞島市一の旧家、五位堂家の末娘、結。桂馬と結は入れ替わってしまう。居心地が悪くなって駆け魂を出す予定が、結(中は桂馬)は乙女ゲーにはまり、桂馬(結)はドラムに夢中。
そして元お嬢様の青山美生。もしかして記憶が?

桂馬の「人ってなんでこんなに簡単に隙間が空くんだ?」感じ入った。天理の「幸せを求めるため」というより、「不幸を数えたがる」と桂馬の言う方が現代人ぽい。
よくできてる。ほんと感心する。
                         2010/6/23

【コミックス】

タグ:若木民喜
posted by zakuro at 18:43| Comment(0) | 漫画-少年青年系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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