上杉達也と和也の一卵性の双児と、お隣の浅倉家の南は同じ歳で一緒に育つ。
やんちゃな三人のために良家の敷地の間に立てられた子どもたちの家。遊び場だったそこは、大きくなるにつれて勉強部屋になる。
達也と和也は、性格がまったく違い……、和也は成績優秀の品行方正、将来は甲子園を期待されているスポーツマンで人気者。一方、達也はなんの取り柄もなく、女好きの出がらし扱い。南は成績も優秀、可愛く男子の人気を集めている。
南の夢は、甲子園のスタンドで応援すること。その夢を叶えるのは?
南がほんとに好きなのは?
明青学園の中等部三年生から高等部三年の秋まで。
週刊サンデー。80年代を一世風靡したラブコメ野球漫画。
アニメになり、映画では実写にもなり、ドラマにも……どれもがヒット。
しかもこの当時は「うる星やつら」も連載していて、サンデーの黄金期でもある。
時を超えての人気振りで、今でも「心に残る野球漫画」の第一位(2009年夏、オリコン調べ)。
一見何でも出来る弟は、実はひたすら努力の人で、ちゃらんぽらんの兄は天才肌だが、弟思いで何でも譲っていく。一番大事なものさえも…。
ここは、作者と、実兄のあだち勉との関係そのものなのだろう。
尊敬する兄の背中を見て漫画家を目指すも、兄は弟の才能を見て裏方に徹して弟を支える決意をする。
だからこそ、作中では兄に花を持たせたかったのかもしれない。
子どもの頃は、こういったモノの見方はできなかった。
この作品の主人公からつけられた名を持つ子たちが、今の甲子園で活躍している。
この作品の初見は、かなり辛くて泣き暮らしたものだった。
だからか、全巻持っていて読んだにもかかわらず、最初の頃しか覚えていない。
多くの読者のトラウマになったんじゃなかろうか? 思春期には辛い仕打ちだった。
主人公たちが背負ったものは、大人になった今、考えても大きすぎると感じる。
やっぱり野球漫画家だ、すごい。
特に野球の実況が面白い。さすがだ。
改めて感じたのは、これは視点がスタンドで応援している側。試合運びが、南の視点なのだ。「おお振り」はゲーム中の選手視点で、また面白さが違う。どちらも楽しい。
この作家さんの魅力のもうひとつは女子。
いろいろ考えてみたけど、グラビアアイドルっぽいのだ。グラドルの二次元化の萌えだったんだなー。
南が新体操にいったのは、そのあたりの読者サービスだったのか……。子ども過ぎて気づかなかった。
ゴジラの重ね撮りには、大爆笑した。
中盤からはかなりもたついている感がある。それでも上手いけど。
後半はかなり詰めが甘い。急にサイドストーリーが入ってしまったり……それまでにもそういう寄り道があったならともかくも。
もちろん物語には原田のような潤滑油は必要で、そのキャラにサービスがあったとしても、だ。売れっ子アイドル歌手はいらない。印象に残ってなかったのはそのせいだったか。
最後にエンジンがかかる。
男同士の勝負などと重みをつけなかったのは素晴らしいし、和也との自己同一化を悩ませるような説明入りの展開にもっていかなかったのは秀逸。
試合会場に足を運べなくなった両親の心の痛みも泣ける。
作品には、読者のいろんな解釈があって良いし、それだから成立するのだということを、この作品で初めて実感出来たかも知れない。
やっぱり泣いた。特に、マウンドに向かう達也の背中に。
うん、名作です。
もちろん私に言うべき資格はないが、あだち充ってすごい。
この齢にもう一度読めて良かった。ノックを始めて良かった。
2009/8/03
《こんなふうにおススメ》
誰もが読んだ作品だと思いますが、大人になってからの再読、特におススメです。
改めて気づくこと、多いです。
【コミックセット:完全版】
【完全版】
ラベル:あだち充
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