2009年11月22日

変幻退魔夜行 カルラ舞う!(完) 全18巻

【変幻退魔夜行 カルラ舞う!】 全18巻  /永久保 貴一

いやいや、長いシリーズなんですよ。
出版社と掲載誌が代わるとシリーズが変わるんですが、そのまま内容は続編です。
続きは「新・変幻退魔夜行 カルラ舞う!」→「真 カルラ舞う!

01 変幻退魔夜行 カルラ舞う! 全18巻
02 新・変幻退魔夜行 カルラ舞う! 全18巻
03 真・カルラ舞う! 全08巻

一気読みしました、面白かった。何度も読み直したいです。
まだまだ続く予感です。現在で44巻ということですよね? すごい。「ガラスの仮面」と、タイですよ(2009年11月現在)
一応、少女漫画カテゴリーですが、歴史や民俗学が好きな男子がファンになるんじゃないかなー。

浅園学院高校二年生の、学年主席の頭脳の持ち主扇翔子と、運動神経抜群で合気道の名手扇舞子は双子の姉妹。
扇家は代々隔世遺伝で霊能力の強い者が生まれ、邪法「迦楼羅神教」によって、時には国家レベルの案件も扱う大きな事件を人知れず治めている一族だった。念術を操る舞子と超感覚を持つ翔子は、三十八代教主を祖母から引き継ぐ。
内閣調査室の後藤の命を受け、“呪詛返しの闇の死繰人(シグルト)”と呼ばれる陰陽師の剣持司らとともに、警察では手に負えない難解な事件を解決していく。

内容は、こちら。
01〜03巻 奈良怨霊絵巻
04〜05巻 仙台小芥子怨歌
06〜11巻 飛騨怨霊絵巻
12巻    冬樹裂風録
13〜16巻 瀬戸内怨霊経
17巻    辰王鬼礫行
18巻    伏見狐勧請戸籍譚

短編は、
2巻「お宮さん」
3巻「怪談古屋の守」
6巻「白粉婆」
11巻「アヤカシの墓地 マギーへの手紙」

最初のこのシリーズは月刊ハロウィン。後にこの雑誌は「眠れぬ夜の奇妙な話 ネムキ」になる。朝日ソノラマから朝日新聞社出版本部へ。ハロウィン少女コミック館。
「ハロウィン」って雑誌を聞いたこともないと言ったら、うちのスタッフがかつて読んでいた。びっくり。
86年より長期連載のシリーズもの。アニメ映画にもなっているらしい。
この作家さんが原作の「御石神落とし」が予想外に面白かったので、こちらに手を出す。

「カルラ」に「迦楼羅」が当てられていて、あーっと思う。これはヒンズーの火の霊鳥ガルーダだ。
インドネシアはバリ島に行くと至る所にいらっしゃる。ガルーダ航空のマークでもあるし、インドネシアの国章もそう。元々はインドの神。仏教国のタイの国章もこの鳥。
日本では不動明王の後ろの炎、あれを迦楼羅炎(かるらえん)という。烏天狗に影響したとも言われる。
弁財天や毘沙門天らの七福神への習合など、ヒンズー系の神様も上手に編集してしまう我が国においても、この霊鳥の位置づけは微妙なのだ。日本は水神の国で、水に因む言語はかなり豊か。蛇や竜神信仰は根強い。そのナーガ族と敵対するのがこのカルラ族。そのあたりを踏まえて楽しみに読み出す。

最初はかなりオカルト作品。ホラーが苦手なのでひびる。カテゴリーはサイキックホラー。夜中に読み出し怖い思いをする。

真言密教の力のある家にまつわる話に聞くような物語を、丁寧に描いている。
「スケバン刑事」の匂いもある。連載当時は人気だったんだろうな。
解説が面白くてたまらない。困ったのはなんども本を閉じて調べ物に走っちゃうこと。

怨霊モノは、この作品のテーマのひとつ。
権力者、力があるとは不幸でもある。
死後、さまざまな呪術に使われるケースは事実あって、江戸では平将門が知られている。

最初のシリーズの構成としては、主役は魅力的な女子高生なのに、恋愛モードは怪しい周囲の男同士ばかりで、正直BLで多少の免疫がなかったら辛かったと思った。
歴史の勉強の糸口を広げるために読んでいるので楽しいが、普通に作品としては物足りないことも多い(追記:ちなみに、これらはシリーズを重ねるごとに緩和されていく)。

まず、歴史的設定に引きずられて、キャラたちが可哀相な扱いなのだ。誰がどんな趣味で何が大事で信念はどんなものか、みたいなものは一切わからない。作者が語りたい話に基づいて勝手に動かされている。あまりにも希薄なので、かえってどんな言動でも矛盾がない。キャラそのものがぺらっとしていて感情移入もしないからだ。
悲しいシーンでも、人としての良心として悲しく感じるだけでそれ以上にはならない。キャラとの交流にならないのは、凶悪な事件を三面記事で読んで、人としての個々の良心で感じるのと似ている。
これは「御石神落とし」でも感じたもので、人を描くのにあまり興味がない作家さんなのだと思ってしまった。
人間模様まで描けていたら、どんなに名作だったか。
それは、歴史的なもの以外の設定にも言えていて、描きたいこと以外は無頓着なのだろう。「鋼の錬金術師」「ランドリオール」ってすごいよな、そんなことをやたら感じる最近。

歴史的な仮説はとにかく面白い。そちらに興味があればそれだけでもとてもオススメ。
聖徳太子と、藤原家、山の民、ニギハヤヒ……ああ、そういうことはあるよねーと楽しめる。
白虎の話は可愛らしかった。狐の戸籍も好き。身近な信仰を大事にしようと思う。
後半は社会問題に絡めていて、好感が持てた。

まだまだシリーズは続いていて、絵も綺麗になっていて、話も面白くなっていく。
期待。
                         2009/11/10

《こんなふうにおススメ》
民俗学的な楽しさは素晴らしいです。
こんなに面白いのに、と、欲が出ると望むことはありますが、それはそれ。

【文庫版】

ラベル:永久保貴一
posted by zakuro at 19:07| Comment(0) | 漫画-少女レディース系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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