2010年04月25日

ガラスの仮面 44巻まで

【ガラスの仮面】 44巻まで  /美内 すずえ

貧しく容姿も成績も平凡な北島マヤは、青葉中学に通う13歳。
父はなく、横浜中華街の満福軒で住み込みで働く母を手伝うが、映画やテレビドラマに夢中でいつも叱られてばかり。一度魅入られると常人ならぬ集中力で芝居を暗記してしまうのだ。
その希有な才能をいち早く見抜いたのが、黒夫人と呼ばれ月影千草。マヤを、“千の仮面を持つ”と気づく。
事故で舞台を降りるまでの月影は、伝説の“紅天女”を唯一演じることを許された大女優だったのだ。
演技の面白さに目覚めたマヤは母の反対を押し切り家出、劇団つきかげに入団する。
大女優姫川歌子を母に、そして世界に進出している監督姫川貢を父に持つマヤと同じ歳の天才少女亜弓は、名門聖華学園中等部に通う上品で美しく才気溢れたお嬢様。
彼女がライバルとして唯一マヤを認め、ふたりは紅天女の座を目指し進む。
大都芸能グループ御曹司で次期社長と名高い速水真澄と、亜弓と同じ劇団オンディーヌのスター桜小路優が見守る中、女優として成長していくマヤともうひとりの主人公亜弓の物語。
マヤは“紫のバラの人”足長おじさんの援助で高校も行けることになり一ッ星学園に通う。

花とゆめ。現在は別冊にて連載。
1976年から途中に休載を挟みながら今に至る人気作品。35年……。もはや神話である。
累計で5千万部を超え、少女漫画での発行部数は歴代2位。
その圧倒的な面白さには打ちのめされるほど。

中学生の時、友だちから借りて授業中にこっそり単行本を読んでたのを想い出した。ふたりが共演するところまでは記憶にあったので、けっこう読んでいたと気づく。
今回は、他の作品の合間にちょこちょこ読もうと手にしたのに、それは失敗だった。面白すぎて他を読もうという気が一切起こらず止まらず、すっかりこれにはまってしまったのだ。
三連休(3月)があったのがありがたく(結局この休日の予定をだいぶキャンセル、半日のみ友人と映画に食事しただけ)、終いには食事をまとめて作り置きして没頭するほどだった。

話はかなりえぐい。そうだよな、昔の少女漫画って昼メロみたいだった。
そしてベタだけどわかりやすくて、緻密に練られたシナリオ。面白い。

絵は初期の方が上手い。休載以前の方が情熱も詰まっているように感じる。筆圧の勢いが最初の頃に感じられるのだ。
プロでも描いていないと衰えていくものなんですね。アスリートと一緒なんだな。
シーン演出は大げさな表現が多かった一昔前のモノを感じさせる。

話の構成は、次から次へと起きる試練をマヤたちが乗り越えて成長していく、これが基本設定。
マヤが惹かれる年上のお金持ちと、親しみある同級生も王道。
お約束の展開なのに飽きさせない。

ライバルの亜弓の人気は高い。決していじわるな悪役ではなく、マヤと同じ純粋に演じることの好きな、そしてそのためにはどんな努力も苦労も厭わず卑怯なことはしない正義の人なのだ。
マヤもその亜弓に恥じないために必死になる。
亜弓は天才と評価されながらも、その才能はマヤの前では不安になり、マヤに比べれば読者に近い。

感情移入しやすいのも人気のひとつだろう。
昔の漫画なので、コマ割もオーソドックスで読みやすい。これは中盤からだんだんとダイナミックに変わるが、今の少女漫画主流の変形コマまでにはならない。
台詞が説明口調なのは気になるが、シーン演出で見せるより話の内容で引っ張っていく。

作中劇が見事なので、余計な演出は過剰になるだろうな。とはいえ、だんだんと演出に工夫が出てきてこれも唸る。
これらが巻数が進むにつれてどう変化していくのかが見どころでもある。
感動して泣けてきたところが作中劇だったのに驚かされた。何度か泣かされた。うーむ。これだけでも驚異な作品と実感する。
この重層の濃さと厚みが人気に拍車をかけていると思う。
紅天女の内容は40巻(文庫は23巻)。

「おそろしい子!」の名台詞はいろんな作品でずいぶん見るよね。ギャグネタとしてだけど、それだけ多くの人に愛されている証拠。
俳優を目指す多くの人たちも読んだのだろうな。
自分にも“紫のバラの人”がいてくれたらと、どれだけの人が考えただろうか……。この人の存在がどんなに心の支えになり、生きる勇気になるのか。歳を経た今は、そんな存在にもなってみたい。
桜小路とマヤって、ただの友だち同士の印象だったけど、付き合ってたことになるのか〜〜。海辺で走る恋人たちの姿がネタかと思った私は自重。
犬がアレクサンダーの元ネタもこれだったのか。
それは絵にもあって、白目の表現や衝撃を受ける様も、だいぶネタになっている。

紅天女の里って天川村だったのか……。旅の行程ですぐに気づいた。知っている駅や景色だったからだ。
縁あって何度も行った場所だけど、地元の人たちがこの作者さんと親しくよく話題に出ていたのも理解できた。そして同じように禁足地がある。この夏に人の紹介で、ここを守る神に仕えている方の案内で入って良いところまで入らせていただいたが、それがこの構想と繋がっていたとは知らなかった。その時も「美内さんはよくいらっしゃいますよ」と話されていた。

自分を知ること。それが演技上達の近道なのかも。
それは人生にも通じる。

文庫版には各界の識者たちが解説を寄せている。これが侮れない面白さ、これはこれとして多様な方々の連載物語になっていて感慨深いのだ。
誰が解説かは裏表紙に記載されているので、お目当てで購入しても良いかもしれない。
これはこれで語りたくなるものが多いのだが、20巻の蜷川幸雄は感じ入った。着眼点も畏れ入ったし、この解説自体が小芝居になっていてオチまである。たぶんインタビュアはこの作品ファン。そして娘の蜷川実花か、姪だろう。
また単行本の方は一冊の区切りが良い。すぐ次を読みたくなってしまう。
余裕があって両方を見比べられたらベストだと思う。

そしてファンにはよく知られていることだが、38巻からは連載分の原稿は一切使わず、単行本としてすべて描き直されているらしい。なので、連載を追い、単行本と文庫版を揃えるのが正しい読み方なのだそう。
天上の虹」のように単行本描き下ろしじゃダメなのかとも思うけど、そこは大人の事情なのかな?
                         2010/4/15

《こんなふうにおススメ》
少女漫画の傑作。

【コミックセット】


【文庫版】


【コミックス】

ラベル:美内すずえ
posted by zakuro at 23:13| Comment(4) | 漫画-少女レディース系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
蜷川さんのインタビューは、本人が本人にインタビューしているんだと思いますよ!

あと、浦沢直樹のマスターキートンと、曽田正人作品全部は、必読です。読んだことないのが羨ましいくらい。
Posted by とおりすがり at 2010年06月19日 22:06
コメントありがとうございます。

蜷川さんの解説は、本当にガラカメファンの娘さんが詰め寄って聞いている様子(途中のキレ方とか)だったので、ご自身の演出ならびっくりです。
情報ありがとうございます。
その話はここに書いてあった、など、ありましたら教えていただけますと嬉しいです。それも読んでみたいです。

マスターキートンは、読みました。面白かったです。
まだ感想がまとまらず、感想を上げていないのが350冊ほどあります。

曽田正人さんは、手元に「め組の大吾」「capeta」「昴シリーズ」がありますが、まだ積んであります。

お陰さまで友人たちの協力もあり、漫画本が2万冊近く集まったのですが、氷山の一角をひたすら攻めている感じです。
なかなか読み切れませんね。
頑張ります。
ありがとうございました。
Posted by zakuro at 2010年06月19日 22:49
蜷川さん演出の歌舞伎「十二夜」の本人解説も同じ形式だったので、この書き方がお好きなのかなーと想います^^

マスターキートンも読まれてるんですね!
漫画が二万冊…とても羨ましいです!!
人の感想を読むのが大好きなので、とても楽しく拝見させていただいてます!
感想楽しみにしています!頑張ってください!!
Posted by とおりすがり at 2010年06月21日 22:06
わー、貴重なお話、たいへん感謝です。
勉強になりました。
これからもいろいろと教えてください。

本だらけで、リスト見ながら、必死で読んでます。
漫画なのに…(笑)

なので、備忘録的戯れ言感想ですが、どうかこれからもよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。

Posted by zakuro at 2010年06月23日 01:16
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