旧家の令嬢である白鬼院凜々蝶(しらきいん りりちよ)は高校入学を機に家を出る。家に縛られ、常に自分の顔色を窺われる環境から逃れたかったのと、苛めのトラウマで心にもなくつい悪態をついてしまう「悪癖」を持つ自分を変えたかったのだ。
許された一人暮らしの場所は、「メゾン・ド・章樫(あやかし)」。ワンフロアが一世帯。屋上庭園があり、温泉大浴場付きの最高級マンション。そして一世帯に対しひとりのシークレットサービスがつくという鉄壁のセキュリティーを誇るが、周辺からはお化け屋敷と噂されていた。
独りになりたいが為の一人暮らしを望んだ凜々蝶の前に、「下僕(いぬ)とお呼びください」と、シークレットサービスの御狐神双熾(みけつかみ そうし)が現れる。手取り足取り至れり尽くせりの双熾を前に、凜々蝶は変われるのか。
そして、「メゾン・ド・章樫」の秘密とは……。その住人たちの正体とは……。
先祖に妖怪と交わった者がいたために、子孫で先祖返りした者たちの、時間の中の物語。
月刊ガンガンJOKER。
「いぬぼくシークレットサービス」と読む。
今、アニメやっていて、「めちゃ面白いよー」とあちこちで聞いた。私が「ギルティクラウン」に凹まされている間に皆楽しい思いをして!
藤原ここあさんの作品では、かつて「お嬢様と妖怪執事」にやられまくって、破壊力あり過ぎで、大喜びして、「これ連載して欲しいよなー」と思ったものだった……、と手にしたら! なんと、それを実現してくれたお話ではありませんかっ! わー、やったー。
妖怪資質を持つ人間たちが、本物の妖怪から身を守るために建てられた「メゾン・ド・章樫」。
ツンしゅんで鬼の凜々蝶。
凜々蝶一筋ヤンデレ気味で隠れドS九尾の妖狐、双熾。
マイペースな一反木綿の反ノ塚連勝(そりのづか れんしょう)。
女性好きのマニアックな雪女、雪小路野ばら。
食べることに人生をかける天然少女、がしゃドクロの髏々宮カルタ(ろろみや)。
不良に憧れる豆狸の渡狸卍里(わたぬき ばんり)。
ドSで変態な鬼の青鬼院蜻蛉(しょうきいん かげろう)。
掴み所がなくチャラけてみせる百目の夏目残夏(なつめ ざんげ)ら、メゾン住人たちの、面白おかしいラブコメと思いきや……。
第一章ラストで読者はその展開にすっかり裏切られる。まぁ、伏線張りまくってあったけど。作者さんも何度も言っていたけど。
第二章の始まりの方で凹んだ読者は多かったのではないだろうか?
現在、6巻まで。まだなんにも回収されていないし、この物語が帰着する先もまったく見えない。面白さは裏切られないと信じているので、楽しみに待ちたい。
後からじわじわくる。
第一章から、実は本編と言える第二章への移し方の切なさと悲しさは、それまでの伏線が良く出来ていたから。
キーワードは、「ひとり残った反ノ塚の理由」
やっぱりそこが肝なので書くことにした。壮大なネタバレなので別に「折りたたんで」記載した。興味のある方は、下の方にスクロールして、【ネタバレ満載の感想本編、続きを読む】へ。
先祖返りが生まれると家が繁栄するから、大切にされる反面、疎まれる凜々蝶たち。金持ちばかりなのに、主人とシークレットサービスに分かれているのはどうしてか?(ただの趣味的選択の気もするけど)
各地の「メゾン・ド・章樫」も絡んでくるのか?
「食べられる瞬間まで食べていたい」のカルタに萌えた。
反ノ塚の進路相談には、もうもう爆笑して10分くらい震えてた。漫画でこんなに笑ったの、初めてかもしれない(4,200冊くらい読んできて)。
このふたりはツボ。ほんとに好き。
凜々蝶の三段階戦法にはやられたなー。
ツンデレだと、ツンとデレを行ったり来たりする。デレは特別な手札だから、ツン、ツン、デレ、ツン、ツン、ツン、デレくらいに出し惜しみしなくちゃならない。飽きるし、ツンを自覚していないワガママさが出る。これに共感できるかがカギ。
ツンしゅんだと、ツンとしゅんの間を行ったり来たりして、たまーに、ごくたまーーにデレるだけで、その破壊力はすごくなる。この三段階は大きい。
それに、自覚のあるツンは読者が感情移入して、共感しやすい。反省してるんだな〜の見られ方は、多くの味方がつく。上手い。恐れ入った。
どうやら想像するに、アニメは第一章で区切りなのでは? 暴動という名の祭りになるのは必至。
7巻、早く読みたい。
2012/3/12、3/14UP
《こんなふうにおススメ》
ゆるい笑いがなんとも。この作家さん独特の空気に癒されます。
【コミックセット】
【コミックス】
と、いうことで、本気の感想です。
ネタバレ満載、要注意。
6巻まで/
反ノ塚のみが百鬼夜行戦に参加せず、ひとりだけ(かどうかは、6巻時点ではまだわからない。他の生き残りも今後わかると思う。これも今後の展開の大事なところ)生き残っていたことに、まず寂しさを感じた。
つまり、この第二章のお話、みんなが死んで23年後は、パラレルワールドではなく「同じ時系列」だからだ。ここに、作者の「時間は重みだ」の意味が出てくる。
ここでいう「時間」とは何か。
器としてその人間の姿形が存在することだけでは、生きていることにならない。
メインメンバーではひとり生き残った反ノ塚には、その後の切ない時間の流れがあって、悔恨とかノスタルジーとかいろんなものがぐしゃぐしゃしている。彼の慰めは、後に転生した多くのメンバーに「かつて共に過ごした記憶」があったこと。
その「記憶」こそが、ここでいう「時間」になる。
第一章のたゆたゆした楽しい笑いのある生活がたっぷりと描かれてきたのは、私たちにもその喪失をじっくり味わわせる必要があったからだ。盆の上に載せられ、一緒に踊らされたのだ。読者がめちゃめちゃ凹んだことが、作者の手の内なのだ。
「メゾン・ド・章樫」に来る以前の凜々蝶には、この「楽しい想い出」がなかった。このメゾンで初めて、人との間の幸せを享受し、価値を得た凜々蝶には、今後の行動に対しての動機が生まれてくる。
記憶のない新しい転生の凜々蝶。同じように双熾と愛を交わすようになるが、ここでの彼らは文通してきた過去もないし、惹きあうさしたる理由がない。敢えて言うなら先祖返りとしてのミームのようなDNAに在る記憶だ。
記憶をいじられる恐怖は、最近の50巻過ぎの「BLEACH」で感じた。主人公の一護が今までどんな強者と闘っても、読者に沸き起こることのなかった凍り付いた感情。ほんとの孤独ってこういうことかと衝撃だった。
「人は記憶で出来ているのだ」
かつての記憶を取り戻し、今の双熾と契約解消した凜々蝶がこれからどう動くのか。
次にカギになるのは双熾。尻尾を出さない今生の双熾は何を考えているのか。彼に前世の記憶があるのかどうか。まさにこれからが本編。
元々、この作家さんはシュールなのだ。ただ笑わすだけで収まるわけがない。
テーマも一貫している。「自己と他者との関係性」
正直言って、面白い作品。傑作といえる。
カルタと卍里とか、他のメンバーの切なさはもうなんとも言えないけどね。
2012/3/14
ラベル:藤原ここあ
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